『讃岐見聞録』~「うどん」に魅せられて ~

日記

 

どうも、こんにちは。

 

沖縄らしからぬ寒さに抗いきれず、とうとう厚手のコートを引っ張り出した途端にめっきり気候が“らしさ”を取り戻してしまったため、ほとんどまともに袖を通すことなく再びしまい込む羽目になったばかりの山城です。

沖縄に生を受け、はや40年もとうに過ぎ去りましたが、いったい僕は、いつになったらこの不毛な往復運動に精を出さずに一年を過ごせるようになるのでしょうか。

 

さておき、つい先日、あまりの寒さで無性に暖かいものが食べたくなり、衝動的に丸亀製麺に駆け込んで「うどん」を頂いたのですが、そのまろやかで熱い出汁の旨さに身も心も溶かされた時、ふとかつて過ごした香川県での懐かしい想い出が、ぶわっと脳裏を駆け巡りました。

そんな訳で、今回は「うどん県」の名でも知られる香川県。その狂おしいまでの「うどん愛」の実態について、この目で見たありままの現実を、あらゆる誤解や誹謗中傷を恐れず赤裸々に書き綴りたいと思います。

 

 

2011年4月から2年間。僕は香川県の病院に勤務していたのですが、とにかく香川県民のうどんに対する愛情の深さは、僕の想像を遥かに絶するものでした。

 

香川県民の食生活については、時に『三度のメシに、おやつもうどん』などと揶揄されることもありますが、実際それに近い生活スタイルを生涯を通して実践するような“強者”も少なくありません。

確かに、沖縄県民の「そば愛」にも中々なものがあるように思われます。それでも、どんなに「そばじょーぐー」を豪語していたとしても、そこまでの勢いで沖縄そばを食べ続ける人を、僕は見たことがありません。

 

これは香川県での出来事ですが、「僕は、あまりうどんを食べる方ではないですね。週に2~3回くらいなもんです」と至って真面目な顔で語る友人に対して、僕はあまりに無力でした。

人は、無自覚な「絶対的強者」を前にした時、ただただ口を閉ざして平伏するしかないのだと、その時に深く学ぶこととなりました。

 

 

さらに、香川県民の「うどん愛」は、いささか常軌を逸したとも言える形で世間を驚かせることとなります。

香川の玄関口とも言える高松空港では、営業する4つすべての飲食店でうどんが提供されているのは序の口で、空港内にはうどんの「だし汁」が出てくる蛇口まで設置されていることは、既にご存じの方も多いことでしょう。

 

「蛇口からジュースが出てきたらいいのにな」という誰もが一度は夢見ただろう可愛らしい夢想を、並外れた情熱と大人の財力をもって、あまり可愛らしくない形で現実にしてしまったのが、香川県という訳です。

 

 

そんな「讃岐うどん」の歴史は古く、その起源は今から1,200年ほど前まで遡るそうです。

 

西暦774年に讃岐国多度群(現在の香川県善通寺市)に生まれた空海(のちの弘法大師)が、留学先の中国(当時の唐)で学んだ製麺の技術を、帰国時に博多経由で持ち帰ったのが始まりとされており、実は「沖縄そば」のルーツにもなったという説もあったりします

ちなみに、初代『沖縄そば王』に輝いた「いしぐふー」のオーナーである故池原氏とは、個人的に親交も深かったのですが、氏も「讃岐うどんは、地球上で究極の麺だと言える。水、塩、小麦粉という3つの要素のみで、これだけの奥行きとバリエーションを生み出してきた職人たちの技術と情熱は、称賛に値する」と、絶賛されていました。

 

日本が生んだ鬼才と称される空海は、帰国後も数々の偉業を成し遂げ、まさに「国の礎」を築いたとされていますが、「うどん」の祖とも言える空海は、香川県民にとってまさに「魂と誇りの礎」を築いたとも言えるのかもしれません。



 

さて、こうやって書いてしまうと、世間に根付いたイメージと相まって、「何だ。香川県って、やっぱりうどんしか取り柄がないんだね」などと、つい“勘違い”されてしまう方もおられるかもしれませんが、香川は「うどんの県」ではあっても、決して「うどんだけの県」ではありません

事実、「サヌカイト」と呼ばれる世界でも類を見ない良質な鉱石が採れ、それを扱う石職人の技術も世界一と言われています。

 

また、沖縄県を代表する観光名所の一つ「美ら海水族館」や、ドバイのショッピングモールなどにも設置されている巨大水槽のアクリル加工メーカーである日プラ株式会社。当代屈指の造船職人と謳われる葛原氏を擁する川崎重工。

「芸術の島」として名高い直島なども地元の誇りであり、また香川大学のグループが実用化に成功した「希少糖」は、いずれ糖尿病の歴史を変えることになるかも知れません。

 

 

そうやって、街の至るところに「職人気質」というものが息づいている香川県ですので、料理だって勿論「うどん」だけであるはずがありません。

 

瀬戸内の豊かな海産物を活かした割烹や、ビールと最高に合う骨付き鳥。さらには、小豆島のオリーブも有名ですが、それを飼料とした「オリーブはまち」に「オリーブ牛」なども、全国的に評価が高まってきています。

質の高い食材をふんだんに使用し、全国からも予約の殺到するフレンチレストラン(オーベルジュ)や、幻の「讃岐コーチン」などなど、旨いものに枚挙の暇がありません。

 

 

それでも、ただ一つ。

沖縄の“夜”の長さに慣れ切ってしまった身として、ただ一つ残念なことがあるとするならば──「多くのお店が夜11時までには閉店してしまう」ことくらいなものでしょう。

 

 

 

……何だか、途中から香川県の観光大使みたいになってしまいましたが、どうやら僕、自分で思っていた以上に「香川愛」が深かったみたいですね(笑)

 

いまはご時世的にも、どこかに気軽に旅行するようなことは大いに憚られますが、また色々と世間が落ち着いた暁には、のんびりと香川に遊びに行きたいものです。

ご当地の「耳寄り情報」はまだ色々と隠し持っていますので、もしいつか香川県を訪れることになった際には、お気軽にお声がけくださいね。出し惜しみなしでの大放出をお約束いたします!

 

──以上、香川県の回し者がお届けいたしました(笑)

 

  山城   

 

日記
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