どうも、こんにちは。
日本では「りんご一個で医者いらず」「腹八分目に医者いらず」だの、欧米でも「トマトが赤くなると、医者が青くなる」だのと言われますが、医者として「患者の健康を素直に喜びたい」気持ちと、「もう少し医者にも優しくしてあげてほしい」という気持ちに揺れ動いている山城です。
沖縄でも再び緊急事態宣言が出されるに至りましたが、皆さんお変わりなくお過ごしでしょうか。僕も「医者の不養生」になってしまわないよう、ここで改めて気を引き締め直したいと思います。
さて、前回の記事では、ひたすら香川県が誇る「讃岐うどん」について思うさま語った挙句に、うどん以外の「美味しいもの」についてまで熱弁をふるってしまった僕ですが、実は前々回には「ラジコン」についてありったけの思いの丈をぶつけていたりもします。
そのせいで、もしかしたら皆さんお忘れかもしれませんが、実は僕、れっきとした医者なんです。
思えば、2021年に入ってから「食べ物」と「趣味」の話しかしていないな、と先日ふと気が付いてしまいましたので、ちょっとここらで一度、いかにも「医者」らしい話題を提供することで、諸々の帳尻を合わせることにしたいと思います(笑)。
さらに、新たな試みとして、今回から何回かにわたって同じテーマでお送りしたいと思います。そうなんです。実はブログを始めるにあたって、一度やってみたかったんです。「連載」というものを。
──なんて、野暮ったい前置きはこのくらいにしまして、さっそく今回の本題に入っていくことにしましょう。
という訳で、今回のお話のテーマは、消化器内科医らしく「大腸がん」です。
さて、皆さんは「大腸がん」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
実は消化器疾患、中でも特に「大腸がん」というのは、かなり症状が出にくいものなんです。進行がんになるまで、まったくと言っていいほど症状がでません。
長年、医者として多くの患者さんを診てきましたが、このことについては、ほとんどの方が勘違いされているように思われます。
実際、消化器内科に来られる患者さんの大半は「お腹の調子がすごく悪い」、「どうにもお腹が張る」、「お腹が痛い」、「胸焼けがする」あるいは「どうも便がすっきり出ない」などを気にして診察を受けられますが、そういった方には、病気がないことの方が多いんです。
学生時代の「あるある」話かもしれませんが、試験勉強の当日になって「うわぁ、全然勉強してないよー。今回は、本当にやばいわー」なんて声高に吹聴して回っている人が、しれっといい点数を取ったりするじゃないですか。
感覚としては、あの現象に似ているかもしれませんね。
何かお腹の調子が悪い。具合が悪い。病気があるんじゃないか。そういう人の方が、むしろ “診察” というテストにおいては、かえって “いい点数” を取りがちだと言えます。
特に「大腸がん」の場合には自覚症状がない場合が多いのですが、例えば大腸がんの人が検便を行ったとしても、便潜血の結果は「陽性」にならないことが多いんです。
この傾向は、進行した大腸がんになっても、たとえ「ステージ4」レベルにまで進行したとしても変わりません。
なので、僕たち消化器内科医として一番恐ろしいのは、「俺はいたって健康だから。若い頃からまったく病気なんかしたことない」と豪語する方が、70代や80代になってから初めて病院に来るようなケースです。
そういった方の場合、いざ実際に検査してみたら、既に「ステージ3」や「ステージ4」にまで進行していた、みたいなことも、決して珍しくはありません。「自分は健康そのものだ」と強く信じて過ごしてこられた方ほど、怖いと言えます。
そういった悲しい出来事を何度も経験してきた身として言わせてもらえれば、そんな恐ろしい事態を未然に防ぐためにも、やっぱり30代や40代の時期から、しっかりと定期的に検査を受けるようにしてほしいです。
さすがに、10代や20代の若者を捕まえて「大腸カメラを受けなさい」と駆り立てるつもりはありませんが、どうしても加齢とともに発がんの危険性も徐々に増大してきますので、30代から40代は、検査を受け始める時期として一つの目安だと言えるかもしれません。
ただし、まだ10代や20代であっても、「大腸カメラ」検査を受けた方が良い場合というのも、実はあったりします。
例えば、ご両親あるいはご親戚などの近しい方が、40代や50代という若さにもかかわらず「大腸がん」で亡くなっていた場合などが、そうです。
というのも「大腸がん」は、数ある「がん」の中でも、特に「遺伝性が強い」ことが証明されているものの一つなんです。
要するに、「いつ、どのタイミングで、何歳頃になったら発がんする」という “プログラム” が遺伝子に組み込まれている人が「大腸がん」になりやすい訳ですが、若くして「大腸がん」で命を落とされた近親者のいる方は、その “プログラム” が他の人よりも強力で、しかも早い時期に作動しやすいと言えます。
ですので、もしそういった条件に当てはまる方に関しては、20歳になったら一度、あるいは20代のうちに一度、大腸カメラを受けることが強く推奨される、という訳です。
『じゃあ、「大腸がん」になるかどうかが遺伝によってほとんど決まってしまうのなら、誰にもどうにも発がんを防ぎようがないってこと?」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。
決して、そんなことはありません。
誤解のないように前もって断言しておきますが、きちんとした対策を適切に行えば、多くの場合において、「大腸がん」になることを予防することは可能です。
では、一体どうすればいいのでしょうか。
その答えについては──。
──「待て次回」ということで、ここは一つよろしくお願いいたします(笑)
何だかちょっと強引な幕引きな気もしますが、次回は「大腸がん」が発生する仕組みや原因などに関する話も交えつつ、本題の「大腸がんを未然に防ぐための方法」についてお伝えしたいと思っておりますので、ご期待ください。
引っ張った分だけいい内容になるよう精一杯精進しますので、楽しみにしていただければ嬉しいです。
山城
コメント